スポンサーリンク

不快な音を聴かなくなる保身耳

2016年8月11日

音楽家にとって不快な音や音楽は死の恐怖に匹敵するストレスなのだそうです。

みなさんは、ピアノの練習中に家事の音などの生活音にイライラされたことありませんか?

10代20代は特に高い周波数の音まで聴き取れてしまい、離れた部屋の掃除機の音や、テレビの電波の音などにも敏感に反応しイライラする人もいます。

そしてピアノの調律も少しの違和感を感じれば頻繁にお願いするほどの神経質ぶりを発揮する人もいるでしょう。

音に対する神経質さは裏返せば、自分の出す音にもこだわりを持っているといえます。

ある程度年齢を重ね教える仕事を始めるとアカデミックな人間性も求められます。「ヘタクソ!」と暴言を吐いたり、「聴きたくない」と駄々をこねるわけにはいきません。人の音を受け入れ不快な音や不自然な音楽であっても聴いて、改善するために指摘していかなければならなくなります。

そういった経験は、自身が受けてきた教育の途上で聴いてくださっていた諸先生方に対するあらたな感謝もうまれつつ沢山のことを学ばせて頂ける機会でもあります。



話は戻りますが、コンクールやレッスンなどで長く未熟な音や音楽を聴き続けていると、何が正しいのかがわからなくなってしまった経験はないでしょうか。

レッスンにおいて貪欲に改善しどんどん上手くなっていく人もいれば、全く「糠に釘」「暖簾に腕押し」の人もいます。

そんな残念な音を長時間長期に渡って聴き続けると、自分が出す音も本来求めていたものなのか、誰かの音なのかもわからなくなり、脳の中で「不快と感じる音=ピアノの音」という回路が出来上がってしまいます。そして無意識にピアノの音自体を聴かなくなってしまうという状況になってしまうのです。

これは、母親からずっと怒られ続けていた子供が、母親の声の周波数のみ無意識に聴かなくなってしまうというのと同じで「保身耳」と言います。

この「保身耳」は自分が出す音すら聴けなくなるほど重症になったら、元に戻すために「認知行動療法」が必要なのかもしれません。

俳優などが猟奇的や病的な役柄を演じた後、その役の人格が残りその後に支障をきたす恐れがある場合、それを健全な状態に戻すために用いられている療法です。レオナルド・ディカプリオが強迫神経症の大富豪ハワード・ヒューズを演じた後、自身にも強迫神経症の症状が現れ、約1年かけて治したそうです。

ピアノの場合はずっと超一流演奏のコンサートばかりを毎日聴けばきっとよくなるのでしょう。音を聴くなら、美しい音、心地よい音楽が良いですね。